エピグラフェンにおけるエッジ電子伝導の実験的な実証 – ジョージア工科大・天津大学・フランスCNRSの研究グループと若林教授との共同研究の成果がNature Communicationsに掲載されました。

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2022年12月21日

炭素原子だけからなる一原子層物質であるグラフェンは、熱力学的に安定な二次元物質であるだけでなく、極めて高い電子移動度を有することから、次世代のエレクトロニクス材料として世界中で活発な研究が進められています。

 

ジョージア工科大・天津大学のWalt A de Heer教授のグループは、次世代のパワーエレクトロニクス材料として注目されている炭化ケイ素(SiC)に着目し、SiC基板上で、グラフェンをエピタキシャル成長させる技術で、世界的にトップレベルの研究を進めています。今回、同グループでは、エピタキシャル成長させたグラフェン(エピグラフェン)において、グラフェンナノリボン回路を作製し、グラフェンナノリボンにおけるエッジ状態が担う電子伝導機構を実験的に実証しました。今回の報告では、このエッジ状態による電子伝導では、平均自由行程が50ミクロン以上と、バルク状態の5000倍も大きいことがわかりました。

 

若林教授は、グラフェンエッジ状態の理論予言を1997年に行っただけでなく、グラフェンナノリボンにおける電子伝導理論について、先駆的な研究を行ったことが知られています。加えて、2002年にはグラフェンナノリボンの電子伝導におけるゲート電圧効果、2007年には完全伝導チャンネル機構の理論予言などをおこなっています。今回の実験成果は、若林教授の理論予測を実証する結果ともなっています。

 

SiC基板上でグラフェン回路を作製する最大の利点は、シームレスな集積構造を構成することができる点にあります。シームレスなデバイス構造は、低温での量子コヒーレントデバイスを含むさまざまなスイッチングを提供できることから、エピグラフェンは、シリコンナノエレクトロニクスの後継となる可能性を秘めています。エピグラフェンは今後、技術的に実現可能なグラフェンナノエレクトロニクス・プラットフォームになると期待されます。

 

本研究成果は、2022年12月19日付でイギリスNature Research Groupの「Nature Communications」誌オンライン版に掲載されました。

 

https://www.nature.com/articles/s41467-022-34369-4


【論文情報】

雑誌名:Nature Communications

論文タイトル:An epitaxial graphene platform for zero-energy edge state nanoelectronics

著者: Vladimir S. Prudkovskiy, Yiran Hu, Kaimin Zhang, Yue Hu, Peixuan Ji, Grant Nunn, Jian Zhao, Chenqian Shi, Antonio Tejeda, David Wander, Alessandro De Cecco, Clemens B. Winkelmann, Yuxuan Jiang, Tianhao Zhao, Katsunori Wakabayashi, Zhigang Jiang, Lei Ma, Claire Berger and Walt A. de Heer 

DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-022-34369-4

 

【リンク】

関西学院大学 若林物質設計理論研究室

 

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