2016年04月19日
理工学部講演会「X線の時間分解測定で見る遷移金属化合物のダイナミクス」(和達 大樹 東京大学物性研究所 准教授)
理工学部講演会を下記の要領で開催いたします。是非ご参加ください。
日時:4月27日(水)15:30〜17:00
場所:VII号館1F112号教室
講演者:和達 大樹 准教授(東京大学物性研究所)
タイトル:X線の時間分解測定で見る遷移金属化合物のダイナミクス
<講演要旨>
遷移金属化合物は、高温超伝導、巨大磁気抵抗効果、マルチフェロイック性、金属絶縁体転移などの興味深い性質のために、多くの興味を集めている系である。多彩な性質の背景にはほとんどの場合、電荷/スピン/軌道の秩序現象が起こっており、このような秩序現象の観測が現在の物性物理学の大きなテーマとなっている。
本講演では、秩序現象の静的な性質よりもむしろその超高速ダイナミクス、特にps程度の領域の現象に焦点を当て、時間分解X線測定による研究例を紹介する。特に、アメリカのX線自由電子レーザー(XFEL)施設LCLSとドイツの放射光(SR)施設BESSY IIを用いて、ポンププローブのセットアップで時間分解X線回折・散乱測定を行った結果を示したい。物質を励起するポンプ光はチタンサファイアレーザー(波長: 800 nm)であり、その効果を観測するプローブ光としてXFELかSRのX線を用いている。これまでの研究では硬X線を用いての格子のダイナミクス[1]と軟X線を用いてのスピンのダイナミクス[2]が得られている。本講演ではこれらの結果に加え、東大物性研ビームラインであるSPring-8 BL07LSUにおいて建設を進めている、時間分解軟X線回折・吸収分光システムについても示したい。
[1] P. Beaud, H. Wadati et al., Nat. Mater. 13, 923 (2014).
[2] T. Tsuayma, H. Wadati et al., arXiv:1511.03365.