研究内容

情報通信とエネルギー制御の司令塔・半導体デバイスの革新を目指して

半導体はその登場からまだ100年も経過していないにも関わらず、既に私たちの生活に欠かせないものとなっています。これは半導体が情報・光・エネルギーを司る極めて汎用性の高い技術であるためです(①)。半導体の主役はこれまでも、そしてこれからもシリコンが担うと考えられますが、スマートフォンやパソコンなどの情報端末の頭脳である論理回路を構成する MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型トランジスタ (②)は、すでに教科書で習うような平面型ではなく3次元構造となっています。将来的には、シリコン基板上ではあるものの、MOSトランジスタで電流のON/OFFを行うチャネル部分だけは2次元材料、例えば非常に移動度の高い遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS2やWSe2など)が使われることが期待されています(③)。

また、電力の変換・制御を行うパワーエレクトロニクスの用途では炭化ケイ素、窒化ガリウムなどワイドバンドギャップを有する新たな半導体の活躍が始まっており(④)、さらに酸化ガリウムやダイヤモンドなどにも注目が集まっています。

本研究室では、シリコン半導体で培われたプロセス技術やデバイス物理をベースに、新たな半導体材料ならでは物性を活かした革新的デバイスを創出することを目指し、主に以下の2つの研究テーマに取り組んでいます。

 SiCパワーデバイスの重要課題:SiO2/SiC界面

 
炭化ケイ素(Silicon Carbide: SiC)パワーデバイスは鉄道車両や自動車に搭載されるなど、どんどん身近になりつつあります。低消費電力の鍵となるインバータの構成要素であるSiC MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型トランジスタは、オン時の電流の通路となるSiO2/SiC界面特性が不十分なために本来の性能を発揮できておらず、まだまだ向上の余地を残しています。SiO2/SiC界面特性改善に向けて、新たな酸化方法などプロセスの構築、界面構造の物理分析、デバイス試作とその電気特性・信頼性評価などを行っています。

 ゲルマニウムの2次元材料:Germanene

 
現代の半導体デバイスではシリコン(Si)が主役ですが、1947年に世界で初めて実証されたトランジスタはゲルマニウム(Ge)が使われていました(1956年ノーベル物理学賞)。Geは炭素(C)やシリコン(Si)と同じIV族で、Siよりも電子・正孔共に移動度が高い半導体材料ですが、製造プロセスに敏感で特性制御が困難だったため、主役の座をSiに譲り現在に至っています。鉛筆の芯に使われるグラファイトは、ハチの巣格子状(ハニカム状)に 炭素原子が並んだ層(グラフェン)がファンデルワールス力で結合したもので、グラフェンは豊かな物性を示すことが知られています(2010年ノーベル物理学賞)。Ge結晶は一般的にダイヤモンド構造ですが、ハニカム状にGe原子を並べたGermanene(ゲルマネン)はグラフェンよりもさらに豊かな物性を示すと理論予測されています。一方でその形成は非常に難しく、最近になってようやく報告例が少し出てきた段階です。Germaneneの形成にチャレンジし、その電子物性評価を行います。

実験設備・実験装置

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