学生の皆さんへ

2015年2月27日

物質設計理論研究室の紹介 2015

  私たちの研究室では、ナノスケールの大きさをもつ物質・材料の電子物性を、解析的な理論計算や大規模な数値計算によって解明します。ナノスケールの領域で顕著に起きる特異な電子物性について、基礎理論の構築・整備を行い、新しい機能物性を理論的に予測し、設計を行います。
  我々の身の回りには、様々な物質があります。銅などの電気を流す金属、シリコンなどのエレクトロニクス素子に利用される半導体。あるいは、ダイアモンド、黒鉛、カーボンナノチューブは、どの物質も、炭素原子だけからなるにも関わらず、ダイアモンドは絶縁体、黒鉛は金属、カーボンナノチューブは金属または半導体となります。これらの違いは、物質内部の原子がなす結晶構造と、結晶中での電子状態が起源です。これらをミクロな視点で明らかにするのが、電子物性理論です。
  ナノテクノロジーの急激な進歩によって、グラフェン(炭素原子だけからなる一原子分の厚みしかもたないシート)などの一原子層の厚みしかもたない究極的に薄い物質などが電子・光デバイスに応用されつつあります。そこでは、従来の半導体物理学では記述できない物理現象が数多くあることが分かってきています。たとえば、グラフェン中の電子の運動を記述する基礎方程式はシュレーディンガー方程式ではなく、ワイル方程式(質量のない形式のディラック方程式)で記述されるため、様々な新しい現象が次々と発見されています。さらに、ナノスケールの世界では、表面やエッジの効果が電子物性に強い影響を与えることが分かっており、そこではマクロな世界では現れない特異な量子物理現象が現れます。このため、従来のデバイス物理理論を単純に使うことはできず、それらを書き換えていく必要があります。
  新しい理論的な知見を得ることで、ミクロな電子論の立場から、高効率のエネルギー輸送や変換などを指向した様々機能の設計ができるようになります。私たちの研究室では、(1) 基礎理論の構築、(2)理論を応用した機能設計、(3)新しい物性の予測という大きな三つの目標をかかげて、解析的な理論計算と大規模な数値計算によって、研究を進めて行きます。さらに、次世代デバイスの設計・提案を理論・計算の立場から行います。  
  理論・計算科学の研究は、学部3年生までに学習してきた量子力学、統計力学、固体物理学を基礎に、より高度で最先端の理論を修得しながら研究を進めていきます。そこでは知識の量というよりも、問題の見方やとらえ方、考え方、論理の組み立てや構成に重点をおきながら研究を進めます。また学生の皆さんの若く柔軟な発想力が、研究を進めていく上での鍵となります。研究室では、ゼミと日々のディスカッションを中心に研究を進めていきます。必要に応じて、計算機の各種言語、数式処理ソフトウェア、電子状態解析ソフトウェアなどを修得しながら研究を進めます。前任校では、クラスター計算機の製作なども卒業研究テーマにしたこともあり、計算機が好きな学生さんにも向いています。さらに、自分たちの得た新しい知識を、論理的に整理し、自分の言葉で明解に語るトレーニングも重要な活動の一つです。数学や基礎物理理論で論理を組み立てることで、様々な物理現象が精密に記述されることを理解し、理論・計算科学の研究で養ったスキルを社会で役立てたい学生諸君の参加を期待します。

2014年12月吉日
若林 克法

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