物理数学 I Mathematical Physics I (2016年春学期)
担当:若林
水曜4限 VII号館 104 (注意:102から変更になりました。)
授業目的
量子力学、電磁気学、固体物性論などの先進エネルギーナノ工学科の専門基礎科目の修得に必要となる数学の基礎と応用を理解することを目的とする。物理数学Iでは、複素関数論を中心に講義を進める。
講義に出て、演習問題をしっかり復習すれば、十分に理解できる内容です(ただし、講義をぼーっと聞いていても理解はできないです。きちんと板書をノートに取り、わからないことがあれば、その都度質問するか教科書で学習するなどの態度が大切です。)。
したがって、当たり前ですが、自分の手を実際に動かして、数式変形の各ステップをしっかりとフォローすること。
講義では、数学の厳密さよりも、実際の計算方法や応用例の解説に重点を置きます。
試験は、基本的には教科書[1]の例題や章末問題を中心に出題します。よって、自信のある強者は、必ずしも講義に出席しなくてもよいという考え方もできますが、推奨はいたしません。
講義ノート
第1回目 :なぜ複素関数論を学ぶのか、複素数の演算規則、複素数平面
難易度:易しい
第2回目:オイラーの公式
難易度:易しい
第3回目:複素関数の微分、コーシー・リーマンの関係式、正則性
難易度:中程度だが、新しい概念が入る。
第4回目:複素積分
難易度:中程度
第5回目:グリーンの公式、コーシーの積分定理
難易度:やや難しい。結果はシンプル。
第6回目:複素積分の具体例
難易度:やや難しい。
第7回目:コーシーの積分公式、正則関数とべき級数展開(1) テイラー展開
難易度:やや易しい
第8回目:正則関数とべき級数展開(2) ローラン展開、解析接続
難易度:中程度
第9回目:留数定理
難易度:中程度
第10回目:実定積分への応用
難易度:議論のステップ数が増えるので、やや難しい。一番のハイライト。
第11回目:フーリエ級数展開、複素フーリエ展開
難易度:やや易しい
第12回目:フーリエ変換、ディラックのデルタ関数
難易度:中程度
参考文献
講義は、教科書[1]に沿って進めるが、部分的には、参考文献[3]の内容を使っている。また、教科書[2]は、[1]を補うような内容になっており、自分で読むのにはわかりやすい。参考文献[4]も、独習用に、わかりやすい説明がなされている。第10回以降は、変更がなされる可能性がある。第10回目の講義は、参考文献[5]の内容を一部使っている。
第11回目以降は、フーリエ級数およびフーリエ変換の授業を行う。参考文献[6]をベースに授業を行う。参考文献[7]は、参考文献[6]に対応した演習問題書である。
- 表実:「理工系の数学入門コース5 複素関数」(岩波書店)
- 表実:「理工系数学のキーポイント●4 キーポイント 複素関数」(岩波書店)
- 神保道夫:「複素関数入門」(岩波書店)
- 小野寺 嘉孝: なっとくする複素関数 (なっとくシリーズ) (講談社)
- 有馬朗人・神部勉:物理のための数学入門 複素関数論(共立出版)
- 和達三樹:「物理のための数学(物理入門コース 10)」(岩波書店)
- 和達三樹:「例解 物理数学演習(物理入門コース 演習5)」(岩波書店)
評価
中間試験:50%
期末試験:50%
その他:0%
但し、合格ラインにわずかに届かなかったものについては、救済措置を行う場合がある。
中間試験
第6回か第7回を終わった頃を目処に、中間試験を実施します。期末試験に比べると、中間試験は出題範囲が狭く、さらに難易度も易しくなる(と思う)ので、ここでしっかり点数を取ることが単位取得に直結します。
期末試験
出題範囲は、後半部分が中心ですが、中間試験の範囲も含む。
救済措置
期末試験後、対象者に、ノートを提出してもらいます。対象者は、期末試験後2日程度以内に本ページにて発表します。ノートの内容(板書書きの丁寧さ、演習問題の解いた量) を加味し、評価をします。ノートの内容が、正しく丁寧に書かれていれば、試験得点に加点し救済します。下記、評価の項目も参照。
追記:対象者の人数は、おおよそ素点合格者(テストの点数だけで合格に達した者の総数)の2割程度。したがって、試験のみで合格したものの人数が多いほど、救済される人数が増える。
ノート審査のポイント(2016/07/22追記)
1) 12回分の授業の講義ノート(+授業後演習問題)が丁寧に書かれていること。筆跡が異なる、雑な記述、明らかな間違いの記述は、即不合格。
2) 中間試験および期末試験の全問題を解き直し、正答を記載すること。
中間試験攻略のポイント
基本的には、授業後の毎回実施している演習問題と、教科書[1]の第4章までの演習問題を改変して出題する。試験時間は75分。100点満点で、配点は問題用紙に記載してある(明朗会計である)。
- 複素数の極表示を理解できているか
- オイラーの公式を正しく運用できるか?
- C-R関係式から複素関数の正則性を判定できるか? C-R関係式を使った問題が出題されているので、C-R関係式を覚えておくこと。
- 複素積分が正しく計算できるか?
- 周回積分が実行できるか?
- コーシーの積分公式、積分経路の変形の考え方を理解しているか?
期末試験攻略のポイント
中間試験同様、授業後の毎回実施している演習問題と、教科書[1]の第6章までの演習問題を改変して出題する。および教科書[7]のフーリエ級数、フーリエ変換の章もネタ元となる。試験時間は75分程度。100点満点で、配点は問題用紙に記載してある(明朗会計である)。
- べき級数の収束半径が評価できるか
- ローラン展開を正しくできるか
- 留数を正しく求められるか
- 留数定理をつかって積分を評価できるか
- フーリエ級数展開ができるか
- フーリエ変換ができるか
- ディラックのδ関数、ヘビサイドの階段関数を理解しているか。
評価
総合点(100点満点) = (中間試験 100 + 期末試験 100) x (補正係数 α) /2
補正係数αは1より大きい値であるが、適用するかは、期末試験後に決める。総合点が、60点以上が合格。
50点程度(多少下振れさせるかもしれません)以上、60点未満を対象に、ノート評価の希望者を募る。ノート評価が良ければ、60点として合格。対象者は、LUNAまたは本ページにて、期末試験後に公表する。ノート提出締め切りは、対象者公表後、36時間以内を目処として締め切りを設定する(成績評価登録締め切りに間に合わせるため)。
講評
本年度、複素関数論の話題を中心に物理数学Iを開講した。初開講であるため、不測のトラブルも心配されたが、概ねシラバスでの予定通りに講義を消化することができた。高校数学を新課程で履修した学生にとっては、複素数の初歩は既習であったため、最初は取り組みしやすかったと思われる。結果として、履修申請した学生の約6割程度が合格となった。ただ、後半部分で紹介した、デルタ関数、フーリエ級数展開、フーリエ変換等については、単位を取得した学生を含め、理解不足な答案が散見された。これは期末試験直前であったため、十分に準備ができなかったのではないかとも考えられるが、量子力学、固体電子論等の専門科目では頻出する数学概念であるから秋学期までに十分に復習しておくこと。また、全体として、基礎的な微分・積分演算でのケアレスミスが目立った。これについては、とにかく自分で手を動かす訓練が必要です。特に物理系科目では、教科書を読む際には、式の導出を自分の手で確かめる訓練、正しい答案を書く訓練を心がけるようにしてください。本年度、惜しくも単位を取得できなかった人は、もう一度、演習問題と試験問題を丁寧にじっくり復習してください。思わぬ勘違いをして演算ルールを覚えている人などもおりますので、答えを見ずに正しい結果が導けるようにトレーニングを積んで下さい。